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戦車模型 AFV fun
それは男の憧れる力の象徴。無敵の装甲は、びくともしない不動心へのあこがれ。鋼鉄のキャタピラは信念を曲げず困難を乗り越え突き進む哲学の具現。        
「サブミナル汚れ」
思考は言語に依存します。
言葉がないということは、モデラー間に共有概念がないことに他なりません。
これまでの塗装用語は、あまりに雑すぎました。
ない言葉は作るしかありません。
事象として個人がなんとなーく体感していることを言葉として定義し、
議論の場へもちだすことが、さらなる発展を生むでしょう。
モデラーの共有人知としてホイっと
後から来るモデラーに渡してあげることもできると思うのです。
オスト13
しげしげさんは、こちらの記事で「汚れ」には二種類あると分析されています。
いわく、「サブミナル汚れ」(わたしが勝手に命名しました)と
「記号性のある汚れ」。
記号性の汚れは、その名のとおり言語化され
それが何であるのか認識できる汚れです。
すなわち、「雨だれ」「すりキズ」「チッピング(部分塗装はがれ)」「オイル染み」「泥はね」「サビ」「ホコリ」などの事象を塗装表現したものです。
(しげしげさんは、ホコリをサブミナル汚れに分類されていますが、ここでは記号性汚れとしました)

対して、
サブミナル汚れとは、それらに属せず(模型用語としても)言語化されていない(すなわち意識的に認識されない)ような
不定形のかすかな色味のちがい、変色、褪色のような明度の変化など
目には入っているのに意識できていないながらも
しかし心理的効果として有意に影響を与えているような汚れを指します。

そして、リアル感に大きく影響しているのは、このサブミナル汚れではないかと思うのです。


さて、オストの砲塔は、前回の時点から塗装を落としゼロスタートから始めました。
このあと下地にメタルカラーステンレスを塗りました。
オスト0

今回は、色情報はあとからフィルタリング的に加えることとし
グレースケールで塗り始めます。
溶剤の代わりに、水を使った方が乾燥が遅くグラデーションがかかり易いのでは?と考えやってみましたが、結果はほとんど変わらないようです(泣)。
オスト1

油彩でグリーンをのせていきます。
筆ムラがどうしてもできるので、それをそのまま雨だれ表現と有効活用するために
垂直方向に筆を動かしました。
オスト2

ウエザリングマスターを塗って、雨だれ表現(筆ムラ)の平準化と
サブミナル汚れを追加します。
オスト4
とにかく、「どの面ひとつとして同じ表現にならないように変化をつける」
これがわたしの多用する技です。
脳みそは、ある一定の情報量を超えると処理不能におちいるような気がします。
多種多彩な変化をこれでもかと付加することで、分析不能、すなわち
なんだかわからないけどすごい!という印象だけを残すのです(笑)。
オスト5

塗膜の厚みさえわかるように撮影すると、
塗料でこれだけのテクスチャが付いています。
オスト6
(20センチも離れるとまったくわかりませんが、これを良しとするか悪いとするかは人により判断が異なるでしょう。ペーパーをかける手もありますが、今回はこのままで様子を見ます)
オスト7

いつものごとくチッピング。
オスト8
感覚的にチップを入れるのではなく、論理的に考えていれてます。
わたしの考えでは、ここはつま先が良く当たる場所なのです。
パステルを筆で入れると、どうしても大きくなりがちで、はみ出ますね。
オスト9
それをピックで崩し自然な感じにしてやるのです。
後の工程で、油彩も使いさらにサビの実感を高める予定です。
オスト10

チップを入れる位置に悩むときは
こういった塗装ダマをねらってはどうでしょう。
オスト11
瓦礫や小石が飛んできたと考えることもできます。
オスト12

現状で、試しに以前作ったヴィルベルの車体に載せてみました。
う~ん、このチグハグ感はどうしたものでしょう。
オスト14
すごく異物感がありますが、この異物感こそが再生車輌のリアルなのだ!とうそぶくこともできるのでしょうか。

テーマ:模型・プラモデル・フィギュア製作日記 - ジャンル:趣味・実用

コメント
この記事へのコメント
今日、カメラマンの方と話したんですよ。
その方によると、

「写真とか絵画とかの芸術表現って、一般には感覚的と捉えられがちだけれど、手法の殆どの部分は論理的なものなんだよね、論理で追い込めるものは限界まで追い込まないと、確実な表現なんて出来ない、最後は感覚にたよる部分もあるけれど、それこそ『最後の武器』なんだよね。」

なんだそうです。
模型なんかは、そういう平面芸術表現よりも、現物の縮小表現という明確性があるから、より論理性の入る余地が大きいというのは解かるんですけど、平面芸術ですらそうらしいというのにはちょっと驚きました。

論理性と感覚の切り分け、追い込みって、新たな展開が確かに期待出来そうな気がしますねえ。

それはそうと、このオストウインド、車体と砲塔を別の工程で作業されてるんですね。
私なんかは、全体を統一工程で仕上げていかないと雰囲気がバラバラになっちゃってまるで駄目です。
だから戦車ぐらいまでは何とかなるんですけど、飛行機とか車とかもうお手上げ。
羨ましいですよ、こういう分離工程の出来る方って。
2010/12/19 (日) 02:37:06 | URL | しげしげ #-[ 編集]
しげしげさんへ
>論理性と感覚
意識せずになんとなくやっていた部分もありますが、「論理性と感覚」を意識することで
新たな地平が見えてきそうですねー。
非常に感覚的な部分に関しては、説明も難しく、ブログでも割愛してきた傾向もあるかもしれません。
意識することで説明も書きやすくなるかもと思いました。

>車体と砲塔を別の工程
車体は前回作ったヴィルベルのものを試しに使ってみただけですよ(笑)。
みごとにチグハグ感が出ていて
今後の展開を悩みますぅ~。
2010/12/20 (月) 23:33:41 | URL | 宮崎 #-[ 編集]
時間軸の短縮法
をやってるんですね・・・。
モノが汚れていく過程を短縮処理してやってる、そりゃあ、リアルになる筈だわ。
私はようしません。
(汚れているという)結果から見た状況を写し取るいう方法でしか出来ません。んで、写し取る過程でどうしても人間(私)の意思的なフィルターがかかってしまう。
のそフィルターが効果的に機能すれば良いんですけど・・・。
2010/12/22 (水) 16:49:42 | URL | しげしげ #-[ 編集]
論理性
今晩は宮崎さん。
さすがに動きが早いですね~!

感覚的に見てきたモノにきちっとした論理を文章にするのは自分でも・・・?な部分が多いので大変ではないでしょうか。

個性、その人の持つ感性や知識によって作品は仕上がって行きます。

普通は後追いで論理が付いて来るものと考えていました。
それを初めからきちとした言葉で説明しながら作業をする正に王道ですね。

新たな地平が間違いなく見えて来ますよ。
私のような適当モデラーには真似が出来ませ~ん。
2010/12/22 (水) 23:12:43 | URL | ハンス #-[ 編集]
塗装
宮崎さん!おはようございます。
塗装、汚れなど、私も戦車模型を作りながらいつも悩んでいます。
私の場合皆さんのように接近して見るようには出来ていないのでアップには耐えられないのですが、それでも雰囲気が出るよう私なりの工夫で仕上げています。
私の場合の色などの表現ですが、
サプライズ塗装と言った名前が当たるような感じがします。
(一度としておなじ事が出来ないので、毎回驚きがあるという意味です)
宮崎さんの塗装技術は私も主人も大好きなので、チッピング等の技術は真似したいと思っているのですが、
やはり難しくなかなか出来ません!!
宮崎さんの素晴らしい技術、これから一杯参考にさせていただきたいと思っておりますので、また紹介お願いいたします。
それから私もフィンランド軍使用の三突、ジオラマまで完成できました。
今回もまた短時間で仕上げてしまったのですが、私的にはいい感じになったのではと思います。
宮崎師匠のご意見をお聞かせいただけたら嬉しいです。
では、これからもよろしくお願いいたします。
2010/12/23 (木) 08:45:31 | URL | かおり #UTTqB9Tc[ 編集]
初めまして
宮崎様 初めまして!!
ハンスさんのご紹介でお邪魔させていただきました。
07年の記事まで遡り拝見させていただいたのですが・・・畏怖・ショックの連続で、何をコメントすれば良いのやら・・・と思いました。
拙ブログにてリンクさせていただいております、ハンスさん・ヒロナリさんのサイトに続いて衝撃の連続でした。
私は皆様の様に色を掬い上げるような才能を持ち合わせておりませんので、気の効いたコメントを残す事できませんが、毎日訪問させて戴きたいと思います。
今後宜しくお願い致します。

初訪で誠に不躾けではございますが、宮崎様と相互リンクをお願いできれば、誠に光栄でございます。
不束な拙ブログではございますが、日々楽しく模型作りを行っております。
閲覧いただきました上で、許可戴ければ大変光栄です。
ご検討の程、宜しくお願い申し上げます。
ブログ名:コウのなんくるないさ~!!
http://65210177.at.webry.info/
です。宜しくお願い申し上げます。
2010/12/24 (金) 19:51:56 | URL | コウ #-[ 編集]
しげしげさんへ
返事が遅くなりました!
コメントありがとうございます。

>モノが汚れていく過程を短縮処理
時間軸という見方もありますね。
処理の過程は、現実に起こりうることをそのままやりますので感覚的には
「シュミレート法」
という感じでしょうか。

>結果から見た状況を写し取るいう方法
当然この方法でもできるはずですよね。
たぶん難易度はシュミレート法の方が
やってみると簡単に感じると思いますよ。
2010/12/25 (土) 19:01:44 | URL | 宮崎 #-[ 編集]
ハンスさんへ
>説明しながら作業をする
模型誌などで、
作例記事の解説がテキトーにすっとばしたような表現なのは、
それぞれのモデラーに考える余地を与え、
工夫を促すためにズバリ答えは載せないようにしているのだろうか?
と思ったこともありました。
(ですが、いままでのままでは世界水準から取り残されているのが趨勢)

技術的にも理論的にも掘り下げて
広く知識を共有した方が、進歩が早いだろうと判断しています。

そうしてこれまで記事を書いてきましたが
微妙な技術といいますか、わずかな変化しか起こさないような独自の考えで塗っていた部分は
正確に書ききれていなかったのが実情です。
自分の優位性を保つためというセコい理由から
公にする勇気がなかったこともあります。
そういう微妙な部分が、サブミナルメッセージとなって
意識されないながらも、リアル感を伝えることにつながっているかもしれないと
しげしげさんの記事から啓発をうけ
わずかな変化の部分も出来るだけ伝える努力をしてみようと考えています。
2010/12/25 (土) 19:21:51 | URL | 宮崎 #-[ 編集]
かおりさんへ
コメントありがとうございます!
かおりさんのブログも拝見していますが
なにぶんじっくり考えてコメントする時間がとれなくてご無沙汰しています。

かおりさんの作品には、いつもなにかエネルギー感のようなものを感じています。
戦車模型の作り方にもいろいろあって良いはずです。
わたしのように七面倒くさく考えて作らずとも、別の道に光り輝く未来があるかもしれません。
かおりさんには、この記事の
http://ogaeri.blog107.fc2.com/blog-entry-797.html
「技術を学ぶな・・・」以下の部分を贈りたいと思います。
「写真」は、「模型」に、「撮る」は「作る」に置き換えて読んでね。
2010/12/25 (土) 20:01:14 | URL | 宮崎 #-[ 編集]
塗装用語
初めまして
偶然通りかかりました。
汚しと言う言葉ですが、自分はまさにこの汚しを本職の一部としています。
ただし縮小モデルではなく、実際の商業施設等の実物大のサイズですが。
業界の用語だとこの汚しと言う言葉はエイジング塗装と言われています。
age(年齢)、年月を経たと言う意味です。
たぶん汚しだとイメージが悪いのでオシャレっぽく言っているだけだと思いますが、内容は素材や塗膜の経年劣化や物理的な傷等を再現すると言う物です。
ただ実際は物量も多く、人が触ったり耐久性の問題もあるので、宮崎さんほどの作業は殆ど有りません。
自分は今コマ撮りの映像を制作しているのですが、小スケールでのエイジングは実物サイズとは材料等も別物になってくるで、宮崎さんの技法やこだわりは凄く刺激になります。
それでは有り難う御座いました。



2010/12/27 (月) 07:17:27 | URL | yamiken #-[ 編集]
はじめまして、コウさん!
わたしの記事が幾ばくかでも参考になれば
幸いです。
書いた甲斐もあります。

相互リンクに付きましては
これまでも心苦しいながらもご遠慮させていただいてきました。
このブログはリンクフリーです。
リンクは自由にしていただいてかまいません。
ただ、相互リンクの申し出をすべてお受けしていると際限のないリンクの洪水となってしまいます。
わたしのブログのリンクの判断は、わたしに任せていただければと思います。
2010/12/27 (月) 20:54:01 | URL | 宮崎 #-[ 編集]
はじめまして、yamikenさん!
コメントありがとうございます。

ブログもちょっと拝見いたしましたが、プロの方のお話は、何かと参考になりますね。
業界用語ではエイジング塗装と言うのですね。
模型界でもエイジングとよく言います。

この記事では「汚し」と書いていますが
厳密には正しくないと思っています。
やっていることは、汚しも含むのですが、
考え方としては
「本物だと判断するに足る情報を付与する」
ことです。
見る人が本物だと思い込んでしまうような正しい情報を加えていくこと、
(まちがった情報とは、塗れば塗るほどプラモデルに見える情報です)
「リアル情報」?「本物情報」?
何か、うまい言葉はないでしょうか。
それを加えていくことを、便宜上「汚し」と書きました。

エイジングなしで(新車で)、本物に見せることも視野に入れて考えています。
2010/12/27 (月) 21:20:51 | URL | 宮崎 #-[ 編集]
ありがとうございます
宮崎様 こんばんは
お忙しい中を、お返事下さりましてありがとうございました。
又、拙ブログも丹念に見て下さった様で、恐縮です。
今後、宮崎様の記事から少しでも吸収して、模型作りをより楽しめればと思います。
色々とご教示下さいますよう、宜しくお願い致します。
リンクに関しましては、ご貴殿を苦しませてしまう形になりまして、申し訳ございませんでした。
2010/12/27 (月) 22:04:04 | URL | コウ #-[ 編集]
コウさんへ
かつて久米島出身のガールフレンドがいたことがありまして、沖縄の人にはとても親しみがあります。
久米仙も飲んでますよ。

お互い模型作りもたのしんでいきましょうね!
2010/12/29 (水) 20:09:27 | URL | 宮崎 #-[ 編集]
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